少子高齢化に伴い、人手不足は深刻な社会問題となっています。特に飲食店は複数の要因が重なり、採用活動の難しい業種です。例えば勤務時間が不規則、立ち仕事が多く肉体的にきつい、接客業に精神的なストレスを感じる、ワークライフバランスが取りにくいなどの理由が挙げられます。
近年では若年層を中心に仕事とプライベートの両立を目指す方が多いです。転職では、ワークライフバランスに直結する「勤務地」が重要な条件の一つとなります。飲食店が効率的に採用活動を進めるには、勤務地を一定のエリアに限定した「エリア採用」を推進するのも一つの方法です。当記事では、転職活動で勤務地が重視される理由や、飲食店の採用活動を成功させる秘訣などをご紹介します。
目次
「勤務地」は転職先を決める重要な条件
近年、仕事とプライベートの両立を目指す方が増えています。転職先を決める際に重視することに「勤務地」を挙げる転職者も増加しています。一方で、「勤務地への不満」は増加傾向にある転職理由の一つです。ここでは、転職先を決める重要な条件の一つである「勤務地」について解説します。
転職で重視することTop3は「仕事内容」「勤務地」「事業内容」
転職サイト『エン転職』を運営するエン・ジャパン株式会社が2019年に実施した「20代の転職・仕事観 意識調査」によると、転職先を選ぶ際に重視することTop3は「仕事内容」「勤務地」「事業内容」となっています。同調査では、82％の方が仕事内容を、81％の方が勤務先を、76％の方が事業内容を「重視する」、もしくは「やや重視する」と回答しました。
勤務地を重視する割合は、給与・年収を重視する割合（73％）を上回ります。30代前半の転職者を対象とした調査においても76％の方が「重視する」、もしくは「やや重視する」と回答しました。結果、勤務地は転職先を決める重要な条件となっていることが分かりました。
理想の働き方は「仕事とプライベートの両立」
前述の「20代の転職・仕事観 意識調査」において、理想の働き方に関する頻出キーワードを分析したところ、第1位は「プライベート」となっています。理想の働き方は「仕事とプライベートの両立」であるとが多数寄せられました。また、第3位には「両立」がランクインしています。多くの方が家事や育児と仕事の両立を望んでいることが伺えます。第5位は「ワークライフバランス」となっており、仕事中心の生活ではなくプライベートも充実した、ワークライフバランスの取れた生活が求められているという結果となりました。
転職理由では「勤務地への不満」が増加傾向
転職・求人サイト『doda（デューダ）』を運営するパーソルキャリア株式会社が毎年実施している「転職理由ランキング」の2022年度調査によると、14.3％の方が「職場が遠すぎる」もしくは「職場が近すぎる」といった「勤務地への不満」を転職理由として挙げています。この結果は総合ランキングで15位に位置します。これは、2021年度の調査結果（11.6％・20位）を上回る結果でした。この結果にはIターンやUターンをしたい方も含まれます。しかし、転職にあたって一定の方は「働く場所を変えたい」と考えているようです。
「勤務地」は内定辞退の理由でも上位にランクイン
中途採用・転職サイト『type（タイプ）』を運営する株式会社キャリアデザインセンターが2022年に実施した「内定辞退理由に関するアンケート調査」によると、31.6％の方が「勤務地や給与など条件が折り合わなかった」ことを内定辞退の理由として挙げています。この割合には給与等に関する不一致も含まれます。しかし、勤務地や給与に関する不一致は第1位の「より魅力的な企業から内定をもらえた」（44.3％）に次いで第2位という結果です。
年代別に見てみると、20代が32.1％、30代が38.8％、40代が29.3％となっており、30代が突出して多い結果となりました。30代の割合が多い背景としては、子育て世代に差し掛かる30代は転居や単身赴任が伴う転職を避ける傾向にあるためと考えられます。
転職活動で「勤務地」が重視される理由
前章では、「勤務地」は転職先を決める重要な条件となっていることをご紹介しました。入社後は毎日通勤することになるため、「勤務地」は非常に重要な要素です。ここでは、転職活動で「勤務地」が重視される理由について解説します。
ワークライフバランスを重視する転職者が増えているため
働き方改革や価値観は、若年層を中心に変化を続けています。特に若年層を中心にワークライフバランスを重視する考え方が一般的となっています。ビジネス特化型SNSの『LinkedIn』が実施した調査によると、「ワークライフバランス」は求職者が働く上で最も優先する条件の第3位にランクインしました。第4位には「柔軟な働き方」がランクインしてします。多くの労働者が仕事とプライベートを両立できるバランスの良い生活を望んでいることが伺えます。そのため満員電車や長距離通勤はワークライフバランスを損なうため敬遠されます。結果、職住近接を前提とした「勤務地」の選択は大切な要素の一つです。
家族と離れる単身赴任は極力避けたい転職者が多いため
転職の際に勤務地を重視しなかった結果、後々転職を後悔する場合もあります。例えば配置転換や転勤によって単身赴任を余儀なくされる場合です。夫婦共働き世帯や子育て世帯は簡単に転居できません。そのため、単身赴任を選択するケースも一般的です。転居を伴う異動は家族関係に影響を及ぼす可能性もあります。その結果、転勤の少ない転職先を選択する求職者も増加しています。以前は仕事最優先で、転勤や単身赴任も当たり前でした。しかし、現在は夫婦関係や子育てを優先し単身赴任は極力避けたいと考え、勤務地を優先する転職者も増えています。
地方での勤務には馴染めないと考える転職者が多いため
縁もゆかりもない地方での勤務には馴染めないと考え、転勤に抵抗を感じる転職者も少なくありません。出身地ではない地方には知り合いもおらず、社内の人間関係しかありません。赴任場所によっては趣味や余暇の時間を過ごすような場所もない可能性もあります。そのため、孤独や孤立を感じてしまうこともあるでしょう。特に都市部で生まれ育った方は、地方への転勤には注意が必要です。都市部生まれの若年層を中心に、地方での勤務に抵抗を感じ、勤務地を優先する転職者も増えています。
IターンやUターンを目指す転職者も多いため
逆に、IターンやUターンを目指して転職する方も多くいます。Iターンは都市部など生まれ育った場所で働いた後、出身地ではない地方などに移住し働くことです。一方Uターンは、出身地以外の場所で働いた後、生まれ育った故郷に戻って働くことを指します。高校卒業と同時に上京して大学へ進学し、就職して働いた後、地元の企業に転職するケースなどが一般的です。Iターン転職やUターン転職を目指す場合は、勤務地を優先して転職活動を行うのが原則となります。
飲食店の採用活動が難しい理由
転職においては、ワークライフバランスに直結する「勤務地」が重要な条件の一つです。特に飲食店は求人のハードルが高い業界といわれています。ただし、採用活動が難しい理由は「勤務地」だけではありません。ここでは、飲食店の採用活動が難しい理由を解説します。
勤務時間が不規則
飲食店の採用活動が難しく、求人への応募が少ない理由としては、不規則な勤務時間が挙げられます。朝早く夜遅い飲食店の場合、シフト勤務制を採用することも一般的です。日によって勤務時間が異なり、早朝勤務や深夜労働も当たり前の職場では「予定を立てにくい」「給与が不安定」といった弊害が生じます。残業時間などが曖昧になり、勤怠管理が疎かになるケースもあるため注意が必要です。勤務時間が不規則な職場は従業員の不満が溜まりやすく、転職でも避けられやすい傾向にあるため気をつけましょう。
立ち仕事が多く肉体的にきつい
飲食店の業務は立ち仕事が多く、体力の衰えに従い肉体的にきつくなることがあります。長時間の立ち仕事は負荷が大きくなります。そのため、腰痛や下肢静脈瘤といった病気を引き起こす恐れもあるため注意が必要です。冬は寒く、夏は暑い職場も多いため、妊娠や出産を控えた女性も注意が必要です。また、平日のランチタイムや土日祝日など、繁閑の差が激しく休憩を一定の時間に確保できない場合もあります。シフトによっては、連勤や長時間労働を強いられる可能性もあるでしょう。体力に自信のない方や年齢を重ねた方は、肉体的にきつい飲食店を避ける傾向です。
接客業に精神的なストレスを感じる
接客サービス業でもある飲食店は、お客様に対し配慮ある対応が求められます。時にはクレームが入ることもあります。接客対応に精神的なストレスを感じる可能性もあるため注意が必要です。特に、カスタマーハラスメントに該当するような迷惑行為には、十分気をつけなければなりません。居酒屋などでアルコールを提供する場合は、酔客の対応をしなければいけません。顧客からのクレームやカスタマーハラスメント、酔客の対応などによる精神的なストレスは、飲食店への転職を阻害する大きな要因です。
ワークライフバランスが取りにくい
飲食店は、土日祝日や夜間など世間一般が休みの時間帯に働くことが多くなります。また、飲食店の経営では、「FLコスト」などと呼ばれる原材料（Food）と人件費（Labor）が必要経費の大部分を占めるのが特徴です。人件費を抑えるため、必要最低限のスタッフで店舗を運営することもあります。スタッフが欠勤すると、急遽別のスタッフが勤務したり残業したりする場合もあります。このような勤務形態ではワークライフバランスが取りにくく、飲食店への転職を阻害する大きな要因となっています。
飲食店の採用活動を成功させる秘訣
求人のハードルが高い飲食店の採用活動を成功させるには、福利厚生を充実させ、求人方法を工夫しましょう。求職者が重視する「勤務地」について配慮するのも一つの方法です。ここでは、飲食店の採用活動を成功させる秘訣を解説します。
福利厚生を充実させる
求人への応募を促進し、飲食店の採用活動を成功させるには、福利厚生を充実させることが重要です。休暇を取りやすい制度や、育児や介護と仕事を両立できる制度などを検討しましょう。ワークライフバランスを確保しライフステージの変化に伴う離職を防止できます。飲食店特有の制度としてまかないの提供や、補食費を支給する取り組みも有効です。まかない付きの求人は人気が高く、採用活動では大きなアピールポイントとなります。
リファラル採用を取り入れる
離職率が高い飲食店の場合、「リファラル採用」を取り入れるのも一つの方法です。リファラル採用は社員紹介採用とも呼ばれます。自社の従業員に友人や知人を紹介してもらう採用手法を指します。求める人材をピンポイントで採用でき、マッチング精度を高められるのが特徴です。既存の従業員が自社の特色や職場の雰囲気、仕事の内容などを伝えてくれるため、離職率を抑えられるというメリットがあります。
エリア採用を推進する
ワークライフバランスを重視する求職者にとって、勤務地は非常に重要な要素です。満員電車や長距離通勤はワークライフバランスを損なうため、遠方の勤務地はそれだけで避けられる傾向にあります。そのような求職者にアピールするには、「エリア採用」を推進するのも一つの方法です。エリア採用とは、勤務地を一定のエリアに限定して採用する方法を指します。エリア採用で転勤がないことを確約することで、勤務地を重視し単身赴任などを避けたい転職者にアピールできるでしょう。
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まとめ
今回は転職における勤務地の重要性を解説しました。若年層を中心に仕事とプライベートのバランスを重視する考え方が一般的です。そのため、転職においてはワークライフバランスに直結する「勤務地」が重要な条件の一つとなっています。ワークライフバランスが取りにくく、求人の難しい高い飲食店が採用活動を成功させるには、勤務地に配慮した「エリア採用」を推進するのも一つの方法です。エリア採用で職住近接を保証することで、勤務地を重視する転職者にアピールできるでしょう。エリア採用を推進するには、勤務地検索がスムーズな『マップジョブ』の利用がおすすめです。