飲食店を開業する場合、法人設立か個人事業主として開業するか検討が必要です。法人と個人事業主にはそれぞれメリット・デメリットがあります。事業所得や保険など、うまく使い分ければ一定の節税効果が期待できます。一方で、判断を誤ったり法人化のタイミングを逃すと、余計な負担が増えてしまうため注意が必要です。当記事では法人の飲食店と個人経営の違いを解説します。また、それぞれのメリット・デメリットや法人化すべきタイミングをご紹介します。
目次
法人の飲食店と個人経営の違いとは?
私たちにとって馴染み深い飲食店には、法人が営む飲食店と個人経営の飲食店があります。飲食店の新規開業を検討する場合、法人を設立すべきか個人事業主として開業すべきか迷う方も多いかもしれません。法人の飲食店と個人経営の飲食店は、何が異なるのでしょうか。ここでは、個人事業主と法人の違いを詳しく解説します。
個人事業主と法人の違い
まずは個人事業主と法人の違いについておさらいしておきましょう。個人事業主は、法人化せずに個人で事業を営む方の総称です。税務署に開業届を提出することで、個人事業主として独立開業したと見なされます。なお、開業届は必ず提出しなければならないものではありません。開業届を提出しなかったからという理由で罰則はありません。一方、法人は法律に基づき人と同等の権利や義務を有する組織や団体です。いわゆる法人格を有する組織・団体には株式会社や合同会社があります。事業活動によって得た利益を従業員や株主といった構成員に分配することを目的とした法人を営利法人といいます。
一般的には個人事業主として開業するケースが多い
個人事業主と法人では税制上の違いや責任の範囲が異なります。飲食店を開業する場合はこれらの違いを把握しておく必要があります。飲食店の場合は一般的に、個人事業主として開業するケースが多いようです。総務省統計局が2006年に実施した「第20回事業所・企業統計調査」によると、外食産業における経営組織別事業所数の割合は個人経営が61.9%となっています。つまり、個人経営の飲食店が総店舗数の6割強を占めています。さらに、法人形態でも資本金1,000万円未満の事業所が7割5分を占める など、中小・零細の事業者が多いのも特徴です。
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なぜ個人経営の飲食店が多いのか?
個人経営の飲食店が多い理由は、事業利益が少ない間は節税効果が期待できるからです。そのため、個人事業主として独立開業するケースが多いためと考えられます。まずは個人事業主として開業します。そして、利益が一定の水準を上回ったタイミングで法人成りするのも一般的です。
個人事業主は開業手続きが簡単で会計業務もわかりやすい、利益が少ないうちは税制面で有利などのメリットがあります。一方、法人は設立コストが高く決算手続きも煩雑です。さらに、利益が少ないうちは税負担が大きいといった点がデメリットです。家族経営の飲食店は青色申告によって家族の給与を経費算入できます。その点も、個人経営の飲食店が多い要因と考えられます。
個人事業主として飲食店を開業するメリット・デメリット
個人飲食店は外食産業の6割強を占めます。また、個人事業主は開業手続きが簡単など、さまざまなメリットがあります。一方、社会的な信用は低く所得が増えると税負担が重いなど、一定のデメリットがあるのも事実です。ここでは、個人事業主として飲食店を開業するメリット・デメリットを解説します。
メリット1:開業手続きや会計業務が簡単
個人事業主として開業するのは、法人の設立に比べるとはるかに簡単です。法人の設立には定款認証や登記申請などが必要です。ただし、個人事業主であれば法務局に開業届を提出するだけで独立開業できます。株式会社を設立する場合は20数万円の設立コストがかかります。一方、個人事業主は開業届を提出するだけなので特別なコストもかかりません。
また、個人事業主は会計業務もはるかに簡易的です。決算公告が義務付けられた法人の場合は会計業務の難易度が高くなりがちです。また、必要に応じて税理士や公認会計士など外部の専門家に依頼する必要があります。しかし、個人事業主は確定申告さえ行えばいいため、会計業務の難易度も低くなります。
メリット2:利益が少ないうちは税制面で有利
事業の利益が少ないうちは税制面で有利なことも、個人事業主の大きなメリットです。日本の所得税は超過累進課税制を採用しています。結果、所得が一定の水準に達するまでは法人に課される法人税より税率が低くなります。具体的には、事業所得が年800万円以下の場合は中小企業の法人税は一律15% です。それに引き換え、所得税は所得に応じて5%から段階的に増えていく 仕組みです。さらに、個人事業主の場合は売上が赤字の場合は所得税も住民税も課税されません。一方、法人の場合は赤字決算であっても法人住民税の均等割は課されるため注意が必要です。
デメリット1:所得が増えると税金が高くなる
個人事業主は利益が少ないうちは税制上有利です。しかし、所得が増えると税金が高くなるため注意が必要です。前述の通り、日本の所得税は超過累進課税制を採用しております。そのため、所得に応じて税率が高くなります。法人に課される法人税は2段階制で、中小企業の場合は事業所得が年800万円以下で15.0%、年800万円超で23.2%の税率 です。一方、個人事業主の所得税は7段階に分かれています。所得税の税率は5%からスタートして最大45%の税率 となっています。所得が一定の水準を超えると、法人税より所得税の方が高税率のため気をつけましょう。
デメリット2:社会的な信用が低い
個人事業主は、法人に比べると社会的な信用が低い点にも注意が必要です。法人の設立には一定の手間とコストがかかります。それに比べ、個人事業主は開業届を提出するだけで簡単に開業できます。しかし裏を返せば、個人事業主はどうしても社会的信用が低くなってしまいます。開業資金や運転資金を確保するため資金調達を行う場合、社会的信用の低さは大きなデメリットです。例えば、個人事業主の場合は銀行を始めとした民間の金融機関から融資を受けるのはかなり難しいかもしれません。国や地方自治体が交付する補助金や助成金も、個人事業主は対象外のケースがあります。
法人として飲食店を開業するメリット・デメリット
法人の飲食店はチェーン展開している大手飲食店のイメージが強いかもしれません。ただ、小規模飲食店でも法人化した方がよい場合もあります。法人化するには一定の手間やコストがかかります。また、利益が少ないうちは税負担も大きいというデメリットがあるのも事実です。ここでは、法人として飲食店を開業するメリット・デメリットを解説します。
メリット1:利益が多くなると税制面で有利
税率が2段階制の法人税は、利益が少ないうちは税負担が大きくなりがちです。しかし、利益が多くなり一定額を超えると、個人事業主の所得税より有利になります。例えば、事業所得が1,000万円の場合、法人税は23.2% なのに対し、所得税は33% の税率です。所得税は所得に応じて税率が上昇します。所得税の最高税率が45% の一方、法人税の税率は最高でも23.2% となります。利益が大きくなると税制面で有利となるため、所得が増えてきた段階で法人成りするのも一つの方法です。
メリット2:資金調達しやすい
個人事業主と比べると社会的信用の高い法人は、資金調達がしやすいというメリットがあります。例えば、銀行が100%リスクを負って貸し付けを行うプロパー融資は審査が非常に厳しくなります。そのため、個人事業主が融資を受けるのは難しいかもしれません。一方、資本がしっかりしている法人であれば、低金利で高額の長期融資も受けられます。多店舗経営など、事業の拡大を目指す場合は資金調達のしやすい法人の設立がおすすめです。
デメリット1:設立手続きや会計業務が煩雑
社会的信用が高く資金調達もしやすい法人ですが、設立には一定の手間とコストがかかる点には注意が必要です。法人を設立するには資本金を用意し、定款を作成する必要があります。定款の作成は、司法書士など外部の専門家に依頼するのが一般的です。定款が作成できたら公証役場などに提出し、定款認証を受ける必要があります。その後、定款認証を受けたら必要書類を添えて法務局に提出し、法人の設立登記を申請しましょう。
なお、法人を設立するには20万円から30万円程度のコストが必要です。さらに、株式会社の場合は決算公告が原則義務化されているため、会計業務を厳格に行わなければなりません。必要に応じて、税理士や公認会計士などに依頼しなければならないケースもあります。
デメリット2:社会保険に加入する必要がある
個人事業主の場合は国民健康保険と国民年金に加入するのが一般的です。しかし、法人を設立した場合は社会保険に加入する必要があります。法人の飲食店は強制適用事業所に該当します。結果、たとえオーナー1人の飲食店であっても社会保険に加入しなければなりません。なお、社会保険の保険料は事業主と労働者が半額ずつ負担する労使折半です。従業員を雇った場合は保険料の半額を会社が負担しなければならず、保険料負担がかなり大きくなるため注意が必要です。ちなみに、個人経営の飲食店は従業員を何人雇っても社会保険に加入する義務はありません。
個人経営の飲食店を法人化した方がよいケース
個人事業主と法人には、それぞれメリット・デメリットがあります。小規模飲食店の場合、まずは個人事業主として開業し、利益が増えてきた段階で法人化するのも一般的です。ここでは、個人経営の飲食店を法人化した方がよいケースをご紹介します。
利益が増えて一定額を超えた
ここまで解説してきたように、利益が少ないうちは個人事業主の方が税制上有利です。反面、利益が増えて一定額を超えると法人税の方が低税率です。所得控除などの条件によって異なるため一概にはいえませんが、事業所得が1,000万円を超えたくらいのタイミングで法人化を検討するとよいでしょう。法人成りするとランニングコストも増加するため、実際に法人化するか否かについては税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
消費税の課税事業者に移行する
新規で設立開業した法人や個人事業主は、設立開業後2年間は消費税の免税事業者として扱われます。2年経過後は、前々年もしくは前々事業年度の課税売上が1,000万円を超えた事業者は納税義務が生じるため、消費税を納めなければなりません。課税事業者に移行するタイミングで法人成りすると、再度2年間消費税の納税義務が免税されます。ただし、資本金が1,000万円以上の法人は設立1期目から課税事業者として消費税を納税しなければならないため気をつけましょう。なお、仕入れ税額控除にかかわるインボイス制度を念頭に、あえて課税事業者を選択するのも一つの方法です。
共同で開業したい
複数名の共同代表を立てて飲食店を開業したい場合は、法人の設立がおすすめです。共同代表のうち1名を個人事業主として飲食店を開業した場合、代表の所得は事業所得として税金を計算します。一方、他の共同代表は事業主から給与を受け取り、給与所得として税金の計算をするのが一般的です。事業所得と給与所得では経費の扱いが大きく異なるため、公平性の観点からあまり望ましくありません。共同で飲食店を開業する場合は、法人を設立して共同代表全員を役員とし、平等に役員報酬を受け取るのが最善の方法です。
開業後はSmart10でホームページ作成を!
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まとめ
今回は法人の飲食店と個人経営の違いを解説しました。小規模飲食店の場合は、利益が少ないうちは税制上のメリットが大きい個人事業主として開業するケースが多いようです。所得が増えると所得税より法人税の方が高税率に切り替わります。利益が一定の水準を超えたタイミングで法人化を検討するのもよいでしょう。飲食店を開業した後は、Smart10で集客に役立つホームページを作成するのがおすすめです。実績豊富なSmart10は、飲食店経営者の皆様を全面的にサポートします。