飲食店を経営するにあたって避けては通れないのが、提供するメニューの販売価格に伴う原価率の設定です。特に近年は原材料の価格高騰が大きなトピックとなっています。そのため、値上げに踏み切らなければならないケースも少なくありません。とはいえ、やみくもに値上げばかりしていては集客を上げることは難しいでしょう。原価率の目安をどのように設定するのが良いのでしょうか。
この記事では、継続的に安定した利益を上げられるように、適切な原価率の設定について詳しく解説します。
目次
飲食業における原価率
はじめに、飲食業における「原価」とはどのようなものが含まれるのか、詳しく見ていきましょう。
「原価」に含まれる費用
原価とは、飲食店の場合はお店で提供するメニューにかかわる食材や調味料・飲み物などの材料費のことを指します。「食材費率」や「フードコスト」という呼ばれることもあります。メニューの価格のなかに含まれる材料費の割合がどの程度であるかを示すものが「原価率」と呼ばれています。
「原価率を低くすれば利益が上がりやすいのでは」と思う方もいるかもしれません。しかし、飲食店のコストは原価だけではありません。人件費や水道光熱費・家賃などさまざまな内訳があります。利益を生み出すためには原価管理は重要であることは事実です。そのため、やみくもに原価率を下げるのを目指すのではなく、適正な割合を目指すことが重要です。
原価率の高いメニュー・安いメニュー
また、原価率は提供する食材やメニューによって、高い傾向・低い傾向のものに分かれます。
基本的には生鮮食品などは仕入れ値が高く設定されます。なぜなら、鮮度の保持が重要であるためです。
例えばメニューによって原価率が提供額の半分程度ほどを占める場合もあります。産地によって仕入れ値が異なる魚のお造りやお肉を使ったハンバーガーやステーキなどです。反対に、お茶やジュースなどのソフトドリンクのメニューや、アイスクリームやフライドポテトなどのサイドメニューは提供方法が簡単なだけでなく原価率も安い傾向にあります。そのため、多くの飲食店で採用されるメニューとして挙げられる一例と言えます。
原価率の計算方法
各メニューの原価率を算出するには以下の公式を用います。
● 売上原価 ÷ 売上高 × 100
例えば、1,000円で提供したいと思っているメニューの食材仕入れ値が300円の場合、原価率は30%ということになります。業種ごとに原価率の目安は異なります。しかし、基本的には原価率が上昇すると売上からなる総利益の幅が小さくなります。そのため、すぐに大きな利益を出すことは難しいでしょう。
一方で、飲食業においてはおおむね3割程度が原価率の目安とされています。しかし、これより高い原価率であったとしても顧客の回転効率を上げて売上を伸ばす経営方法を採用する例もあります。
例えば、原価率が低いコーヒーなどのドリンクをメインにしているカフェです。ドリンクは原価率が高くなく安定した売上が見込めます。けれども、ドリンク1杯で数時間も店内で過ごす来店客が増加した場合もあります。その際は、回転効率が悪く売上を見込めないといったパターンも考えられます。
反対に、仕入れる食材のグレードを上げる、もしくは単価そのものが高かったとしても、スタンディングスタイルや時間制限などを設けて来店客を増やしましょう。現に原価率の高さを総利益でカバーする経営方式が注目されたチェーン店もありました。
業態別飲食店原価率の目安
原価率の目安は飲食店によっても異なります。経営スタイルや回転効率、客層などの違いによるものです。以下は、日本政策金融公庫が発表した業種別に示したデータから抜粋した、売上高総利益率の平均値および、同データから算出した原価率の値です。売上高総利益率は、売上総利益から原価を引いた割合を指す数値です。そのため、売上高総利益率と原価率を足すと100%になる仕組みになっています。
業種名 | 売上高総利益率 | 原価率 |
レストラン | 63.3% | 36.7% |
一般食堂 | 63.1% | 36.9% |
日本料理店 | 61.5% | 38.5% |
西洋料理店 | 64.2% | 35.8% |
中華料理店 | 64.5% | 35.5% |
カレー料理店 | 71.5% | 28.5% |
そば・うどん店 | 67.1% | 32.9% |
すし店 | 55.7% | 44.3% |
喫茶店 | 68.7% | 31.3% |
バー・ナイトクラブ | 80.4% | 19.6% |
原価率の差
まとめた結果、原価率を30%台に乗せている業種が多くなりました。しかし、「すし店」は4割を超えます。反対に、「バー・ナイトクラブ」の項目は原価率が2割を下回ります。このようにして、傾向の違いが見られるのも事実です。
すし店の場合、メインのすしネタがその年の品質や取れ高によって時価が変わります。また、原価率を上げてでも品質にこだわる方針を打ち出しても利益を上げられる傾向にあることが要因として考えられるでしょう。
反対に、バーやナイトクラブはアルコールドリンクが提供メニューの主戦力となります。ビールや銘柄ワインなど原価率が高い種類のものも中にはあります。しかし、カクテルやサワーなどのメニューは原価率そのものが低くい傾向にあります。また、フードと比較して人件費など提供するコストも比較的抑えられます。それにより、アルコールメニューを豊富に揃えて原価率を下げる運用が可能であることがデータからも分かります。
飲食店の原価率を軽減させるためには
運用方法や業種によって原価率は必ずしも平均値を目指す必要はありません。一方、思ったように売上が伸ばせずに悩んでいる場合、原価率の高さが要因の一つとして考えられるかもしれません。では、店舗としての利益を伸ばすために原価率を抑えるためにはどのような工夫が必要なのでしょうか。
フードロスを減らす
仕入れた食材をすべて来店客に提供し売上に換算できれば悩むことはありません。ただ、来店客が低迷し食材が余ってしまった場合、廃棄せざるを得ない状況に陥ります。そうなれば、仕入れのコストだけがかかり売上には一切結びつきません。そのため、食材の廃棄は特に避けなければなりません。
また、原価率を低くするために仕入れるメニューや食材を考案する際には、「歩留まり」を判断材料の一つにしましょう。歩留まりとは食材における可食部の割合や量のことを指します。歩留まりが多く丸ごと食べられるような食材は、原価率を抑えられます。反対に、皮をむいたり種を取ったりする下ごしらえを必要とする食材が多いほど、コストがかかることは把握しておきましょう。
在庫管理を徹底する
仕入れを実施する際には、多すぎず少なすぎず適正な分量を仕入れるために在庫管理が欠かせません。多すぎると先ほども取り上げたようにフードロスが発生します。しかし、少なすぎると今度は売り切れによる機会損失から評価が低下してしまします。また、生鮮食品などは特に味や風味など提供されるメニューそのもののクオリティを左右するだけではありません。万が一消費期限を経過した食材を使用した場合、食中毒問題などに発展する可能性も危惧されるでしょう。
在庫の適正値を目指すには、まずは現状の仕入れ状況と、それに伴う食材の消費期限や廃棄量を把握します。これらの情報をもとに、仕入れの品物と量を決定しましょう。季節や天候、予約状況、曜日などをもとに客層を予測します。特に、お刺身などの生鮮食品はその日のうちに使いきれる量を想定して発注します。
利益率の高いメニュー開発
また、「現在提供しているメニューそのものが原価率の高いものばかり」といった状況では、メニューそのものの見直しが必要になる場合もあります。
たくさんの食材を使用したメニューは、顧客からの満足度は高いかもしれません。しかし、仕入れや在庫管理のコストがかさみ続け大きな負担となります。人気メニューやおすすめメニューなど店舗側が特に訴求したいメニューは原価率が高くなりがちです。だとしても、こうしたメニューはあまり数を増やしすぎないようにしましょう。その代わり、提供へのコストが低く原価率も低いサイドメニューを豊富にしましょう。要するに両者のバランスを取るというのもひとつの方法です。
フードとドリンクのセットメニューへの訴求
「飲み物はおおむね原価率が低い」といった傾向を生かしましょう。ランチタイムやディナータイムなどにドリンクセットでの販売を提案する方法です。
セットメニューは、単品で注文するよりも合計金額が安く料金設定されています。単品でドリンクを注文するつもりがなかった顧客にとってもメリットとなります。「セットだとお得」という印象を与えやすくなるでしょう。また、お得なメニューやおすすめメニューは目立つように工夫しましょう。印をつけて目立たせたり、写真をつけて分かりやすくしたり、ランキング形式にしたりするなど、より顧客への訴求が容易になります。
飲食店の原価率を考慮するうえでの注意点
原価率の適正値を考慮することは、飲食業の経営のうえでは非常に重要な工程です。しかし、原価率ばかりにフォーカスを当ててばかりではいけません。安定した経営指標のデータとしては結びつかない場合もあります。特に、以下の注意点を留めておきましょう。
原価率だけを重視しない
「原価率を下げれば儲かるわけではない」ということは繰り返し解説しています。なぜなら、経営指標を原価率だけに定めてしまうと、実際の適正値との差が生まれてしまいます。さらに、店舗としての独自性が失われてしまったりする可能性が考えられるのです。
例えば、メニューを考案する際に、価格を決定するために2つの考え方があるとします。
「メニューの提供金額を1,000円にしたいから、原価を30%にして材料を仕入れよう」
「仕入れ値が300円になったから、提供金額が1,000円のメニューを考案しよう」
この2つの意見では、最終的に原価率はどちらも30%になるります。しかし、原価率を目標とするのか仕入れ値をもとに売上総利益(粗利)を考慮しているのかによって着地点が異なることが分かります。
原価率を最重要項目とすると、30%の原価に抑えるためにいかにコストを下げるかという考え方になります。一方で、仕入れ値を基準として金額決定をする場合、粗利を生むために求められる調理や販売方法をどのようにすべきかといった多角的な視点から判断ができるというメリットがあります。
FLコストを考慮する
また、経営における指標となるデータは原価率だけではありません。「FLコスト」は、仕入れ値の原価に人件費を加えたコストを指すものです。売上に対して発生したFLコストのことを「FL比率」と呼びます。FL比率は、以下の公式に当てはめて計算をします。
● (食材費+人件費)÷売上高×100(%)
飲食店におけるFL比率はおよそ50〜60%程度が目安であるとされています。原価率と同じように必ずしもどの店舗においてもこれが適正値とは限りません。ただし、原価率のコストを下げることだけにフォーカスを当てているのに売上の回復が見込めない場合があります。例えば、人件費などの固定費の支出が多い、等という原因が潜んでいます。。
もしも原価率を抑えているのにFL比率が大きい場合は、店舗のオペレーションを改善したり、在庫管理を円滑にするためにメニューそのものを見直したりしましょう。視野を広げ、他の観点から運用を見直す必要があるかもしれません。
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まとめ
円滑な飲食店運用において、原価率をはじめとしたコストの軽減は売上を向上させるために必要なプロセスの一つであることは間違いありません。しかし、売上向上を目指すための指標は原価率だけではありません。コストが膨れる要因は複数考えられることは把握しておきましょう。コストを削減するだけではなく、「集客力そのものを上げたい」「効率的な広告宣伝をしたい」とお悩みの方は、ぜひSmart10のサービスをご検討ください。